蘇る先代からの住まい

Before:M邸 → After: 蘇る先代からの住まい

座敷の被災した様子、罹災証明は「大規模半壊」/撮影:柿本美樹枝 提供:MKds

格子壁で補強したリビング、天井には障子明り窓/撮影:針金洋介 提供:MKds

外観全体、2階部分(昭和の増築)は減築せず/撮影:針金洋介 提供:MKds

落下した長押や破損した欄間、土壁を修復して再利用/撮影:針金洋介 提供:MKds

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平成28年(2016)熊本地震で被災し解体予定だった「大規模半壊」の伝統家屋を修復。築125年の先祖代々からの住まいが蘇った。

リノベーション概要

BeforeAfter
建築名称M邸 蘇る先代からの住まい
A home from our ancestors revived
建築用途住居施設 住宅 住居施設 住宅
建築概要/
Renovation 概要

瓦が損壊、漆喰が剥がれ、外壁の海鼠壁は落ち、北側はシロアリ被害も見受けられ、床は下がり、現代工法の増築部分と境は雨漏れ。

立派に黒光りした太い柱や梁を拝見し、壊してしまうのはもったいないと、床下や小屋裏の調査に入り、修復可能とお伝えした時のご主人の安堵のお顔は忘れられません。周りがどんどん解体され、新築されていく中、余震も続き当初は修復するかどうか、ご親戚の皆さまも一緒に悩まれたことでした。末長く住み継いで頂くために、伝統構法の復元力特性をいかした耐震補強(制振ダンパーの採用や木製の格子壁)に加え、土壁の通気性を生かす杉の断熱材を用い快適性をアップ。通風採光のためのトップライトや内部のバリアフリー等、暮らしやすさの改修も合わせて行いました。床の間は、元気が出るようにと、ベンガラ入りの赤漆喰で修復し、畳の縁も赤色で統一。被災した際の恐怖の体験から、新たな気持ちで住み続けられるようカラーコーディネートも。地震で割れた欄間や建具も出来る限り修復し再利用することで、先祖代々からの住まいの息吹を継承しています。

概要その他

設計者
MKデザインスタジオ一級建築士事務所/柿本美樹枝&一級建築士事務所やどり木/近藤富美
所在地
熊本県上益城郡甲佐町
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改修年
2018
建築規模
建築面積223.37㎡、延床面積241.11㎡、2階建て

リノベーションの手法・キーワード 等

減築, 補強

 

備考

被災建物の調査や修復手法の検討には、建物修復支援ネットワークのご支援、認定NPO日本民家再生協会の仲間の協力、熊本県立大学の北原研究室にもご助言を頂きました。建築士会ではダンパーメーカーと限界耐力計算の講習会を開催。復興は先人の知恵と経験者との情報共有がとても大事だと実感。修復の知恵の継承を次世代に繋げて行きたい所存です。
修復、再生、耐震補強、バリアフリー、断熱改修、自然素材

 

 

記録作成者

氏名
柿本美樹枝
所属
MKデザインスタジオ一級建築士事務所