カサ・デル・ポポロ(旧カサ・デル・ファッショ)

Before:カサ・デル・ファッショ → After:カサ・デル・ポポロ(旧カサ・デル・ファッショ)

建設当時のままのカサ・デル・ファッショのファサード,奥はコモ大聖堂/柳沢伸也(2004年)

イタリア近代建築の傑作と呼ばれるカサ・デル・ファッショ/柳沢伸也(2004年)

トップライトから燦々と降り注ぐ自然光/柳沢伸也(2004年)

トップライトからの雨漏りを防ぐ2重屋根構造/柳沢伸也(2004年)

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建築家ジュゼッペ・テラーニの設計で、1936年に、国家ファシスト党の本部として建てられた。戦後は、地元の財務警察本部に使用されている。イタリア近代建築の傑作とされ、その歴史的・芸術的価値により、1986年に国の文化遺産として登録された。

リノベーション概要

BeforeAfter
建築名称カサ・デル・ファッショカサ・デル・ポポロ(旧カサ・デル・ファッショ)
Casa del Popolo(Ex Casa del Fascio)
建築用途事務所 庁舎 事務所 庁舎
建築概要/
Renovation 概要

建築家ジュゼッペ・テラーニの設計で、1936年に、国家ファシスト党の本部として建てられた。戦後は、地元の財務警察本部に使用されている。歴史的・芸術的価値により、1986年に国の文化遺産として登録された。

2004年はテラーニ生誕100年を記念して、テラーニ作品の再評価を行うイベントが1年を通して行われた。この旧カサ・デル・ファッショをはじめとして、コモ市内に残る多くのテラーニの作品がきれいに修復され、一般に公開された。
カサ・デル・ファッショは、ジュゼッペ・テラーニの代表作品として知られる。戦前に、ファシスト党の本部として建てられ、戦後はカサ・デル・ポポロ(市民のための家)と改称され、財務警察や税務署など多くの行政機関に使用されている。
建物のプランニングは、厳格な幾何学に則り、平面は完全な正方形に納められ、立面も2対1の長方形にきれいに納められている。さらに、立面図をよく見ると、横方向に7分割、縦方向に4分割され、同一サイズの柱と梁によるグリッドが整然と並ぶ。スケッチ段階では右側に高い物見塔が計画されていたようだが、飛び出た塔が無い実現した形の方がかえってこの立面の幾何学的合理性を表現している。内部には大きなアトリウムが設置され、トップライトから自然光が入る仕組みとなっている。1階のみ東西に突き抜けたホールとなっているが、3階以上は中庭を囲うロの字型プランである。
特筆すべきは、戦後、何度も増築案が出されたにも関わらず、専門家の反対によって増築が阻止され、建物がほぼ建築当初のまま保存利用されていることである。1986年に、国の文化財に登録されたが、今なお現役の行政事務所として使われ続けている。

概要その他

設計者
Alberto Artioli(改修)
所在地
Piazza del Popolo, 4, Como, Italy
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改修年
1990年代
建築規模
鉄筋コンクリート造、地上4階、延べ床1,101㎡

リノベーションの手法・キーワード 等

文化遺産,保存改修,外観保存

 

備考

カサデルファッショは、その合理的プランニングばかりが注目されるが、テラーニのディテールにも注目したい。2層吹き抜けの中央ホールは、ガラスブロックから柔らかな自然光が落ちてくるのだが、雨仕舞いを考慮してトップライトは2重のガラス屋根を採用している。また、正面の彫りの深いバルコニーのタテ柱の裏側に雨樋が仕込んであり、雨樋が外部からまったく見えないように工夫されている。

 

 

記録作成者

氏名
柳沢 伸也
所属
JIA再生部会