絵本『みんなのいえ』

2024.04.22 更新 カテゴリ:コラム

著:たしろちさと、発行:文溪堂の絵本『みなのいえ』をご紹介します。

物語は吹雪の中をさまよっていた旅人が町の外れにあった廃墟にたどりついたところから始まります。旅人は崩れ落ちそうな家の補修をしながらその家に暮らし始め、その後やってきた旅人達も一緒に補修し暮らし始めます。まいにち まいにち すこしずつ みんなで なおした みんなのいえの絵本です。

著者の「たしろちさと」さんは「絵本『みんなのいえ』に寄せて」で次のように記しています。

抜粋・・・・・「みんなのいえ」をつくるとき、まず便利さだけを目的としない家にしようと思いました。今、私たちの家には便利さがあふれています。ボタンを押せばエアコンのスイッチが入ったり、お風呂が沸いたりします。でも、もう少しプリミテイブな意味で“住まう”ということを考えてみると、木や、土や、光や風・・・そんな身のまわりの自然がとても大切な要素に思えてきます。住民ひとりひとりが工夫を凝らして、身の回りの自然を自分たちの生活に取り入れる家、アイディアや遊び心が詰まった家・・・それが「みんなのいえ」です。

・・・・・・こうしてできあがった家は、でこぼこがあったり、つぎはぎだったり・・。でもそれは、家族の夢の家。それぞれの個性が刻まれた、世界でひとつの家です。物語の最後に、10人になった家族は思います。“これこそ、自分たちがつくった、世界でひとつの楽しいわが家だ”と。このお話は、10人の旅人が、理想のわが家を見つける物語でもあり、また、忘れられた一軒の家の再生の物語でもあります。・・・・

 

絵本『みんなのいえ』」の初版第1刷発行は202312月ですが、2001年に福音館書店から発行された「おおきなポケット」に掲載したものを再編集したものです。

「建築リノベーションアーカイブ.Com」で収集したリノベーション建築を見ていると、合理化、効率化を追求してきた建築作りとは異なる建築の世界を感じます。そのことを20年以上も前に絵本にした『みんなのいえ』を是非手に取って見て下さい。 (文:桐原武志)