TOKYO BIKE TOKYOが示す「これからの店舗のカタチ」
2023.05.03 更新 カテゴリ:コラム
自転車屋なのに、店内で最初に目に飛び込んで来たのは大階段と植物。
きれいな自転車がずらりと並んでいるかと思いきや、商品の自転車は大階段の裏に置かれ肩すかしを食った。
しかも、店員に最初に案内されたのは大階段で開催している自転車をテーマとした切り絵展の方だった。
tokyobikeの旗艦店「TOKYO BIKE TOKYO」は、1963年に竣工した倉庫を外観はそのままに保存改修した店舗である。
店舗の企画と設計を担当したのは、トラフ建築設計事務所。
主力の自転車売り場を大階段の裏に配置し、吹き抜けの大空間を前面に配置した挑戦的なプランだ。
かつて自転車屋といえば、商品の種類と品揃えの多さこそが専門店とばかり、天井から多くの自転車が吊され、店内にぎっしりと商品が並べられていた。
しかし、現代はインターネットで情報を検索し、値段を比較してポチる時代である。
そのため、実店舗に求められる「モノ」が大きく変化している。
tokyobikeは“TOKYO SLOW”をテーマに、自転車で街を巡る楽しさを発信している会社だ。
自転車の販売だけでなく、周辺のコトや体験を提供することで、顧客にとって魅力的なライフスタイルを提案している。
ライフスタイルの提案が先にあり、モノの販売は後という考え方なのだ。
自転車をたくさん置いていないと売れない、というのは杞憂なのである。
既存の古い建物をリノベーションして店舗として大切に使い続けるという行為は、スローライフを体現する会社としてのメッセージを強く映し出す。
さらには、大量生産や大量消費社会への反省としてのメッセージを打ち出している。
建築リノベーションは、こうした「コト」の創造に大いに役立っている。
(文・写真:柳沢伸也)