城壁の掘を機械式駐車場に転用したCesena

2023.08.10 更新 カテゴリ:コラム

約17年も前の話だが、Cesena駅を降りて旧市街に向かって歩いていたら、不思議な光景に出くわした。
広い幹線道路の下から、機械式パレットに乗った車が次々と出てくるではないか!
後で古地図を見たら、その場所が城壁の周りにめぐらされた堀の跡であることがわかった。
中世時代の城壁の堀を活用した、24時間利用可能な地下の機械式駐車場である。

イタリア北東部エミリア・ロマーニャ州に位置する人口約10万人のCesenaは、中世時代の城壁と堀が残る街である。
夏の間は、バカンス客がどっと押し寄せる観光都市でもある。
近代になって、堀の地上部分を道路に、地下部分を駐車場に整備した。
歴史的な街並みを残したまま、自動車社会へ対応するために編み出された大いなる知恵といえよう。

渋谷の地下駐車場など自走式は見かけることもあるが、道路中央に設置されたオープンエアの機械式駐車場はめずらしい。
古代の城壁と現代的な機械式駐車が共存する光景はまた、私を刺激する。
世界遺産の空間を保存、活用しつつ、現代的な駐車場問題をスマートに解決するリノベーションの好事例である。
(文・写真:柳沢伸也)