リノベーションで生き延びたパンテオン

2024.03.29 更新 カテゴリ:コラム

そもそも、リノベーションは古くから行われてきた。
よく知られているローマのパンテオンも、その一例である。
パンテオンは、アグリッパによってローマの神殿を祀るため、約2000年前に建てられた。
しかし、ローマの神々が信仰されなくなった600年頃、
キリスト教の聖堂にリノベーションされ、破壊を免れた。
コンクリート造で堅固な構造とともに、この象徴的な空間のおかげだったともいえよう。

一方、築58年で老朽化が進んでいるからといって、壊して建て替えようと
している国立劇場のことを知ったら、ローマの人々はなんと言うだろうか?
くしくも1963年のコンペで、岸田日出刀、谷口吉郎、村野藤吾、吉田五十八
といった当時の建築界最高の審査員によって選ばれた名建築である。
当時、最高の感性の持ち主であった彼らに、もう少し敬意を払いたい。
(文・写真:柳沢伸也)