全日本海員組合本部会館

Before:全日本海員組合本部会館 → After:全日本海員組合本部会館

ジョイストスラブは天井材で隠され、天井高が低い改修前の事務室/白岩透 撮影:2021年 

竣工時とほとんど変わらない姿に修復された外観/白岩透 撮影:2024年

天井を撤去しジョイスとスラブを意匠的に見せ、空気のガイドとしても機能させた事務室/白岩透 撮影:2024年

地下大会議室は会議の機能だけでなく展示や図書室と一体となり多目的に利用可能な設えに改修/桐原武志 撮影:20241年

今日的な性能に引き上げるスケルトン改修であるが、歴史と原設計を尊重して保存・修復・復元も行い、公開エリアを設けて社会に開かれた建築として再整備した。

リノベーション概要

BeforeAfter
建築名称全日本海員組合本部会館全日本海員組合本部会館
建築用途事務所 オフィス 事務所 オフィス
建築概要/
Renovation 概要

大高正人の設計で1964年に建てられた全日本海員組合の本部会館。増築や改修を繰り返しながらも丁寧に使われているDOCOMOMO選定建物

組織の本部が入居する老朽化した建物を当初は建て替えが検討されていたが、大高正人にまつわる本の出版や展覧会に関連したシンポジウム等の文化活動の影響を受けて所有者の本建物の建築文化への理解が深まったこともあり、建て替えから改修をすることになったプロジェクト。
 今後も永く機能的に快適で安全に利用するための「更新・修繕」、組合活動の歴史と原設計を尊重し文化的価値を損なわず継承するための「保存・修復」、建築を都市・社会へ結びつけ開かれたものとし組織の歴史・活動と本部会館の建築を広く発信していくことを企画した「新設・改変」、これら相反するともいえる3つほどのテーマを同時に扱い両立的に達成することを目指している。
 具体的な改修内容の項目としては、アスベスト等の有害物質の除去、増築部の解体、既存躯体状況の全点検と補修、内外装の全更新、電気、給排水衛生、空調換気設備の全更新、平面計画の更新、展示室、図書室、地下大会議室の整備であるが、そのための所作と結果は必ずしも一対のものではなく重奏的なものとなるような工夫がされている。例えば、この建物の構造的な特徴の一つである天井で隠蔽されていたジョイスとスラブは空間の主題となるように現しにしているが、これにより床面積に対して天井の高さを確保して空間のプロポーションを整えると共に避難安全性の確保と、空気のガイド機能を付加している。あわせて、開口部をダブルスキンと空調空気のリターンルートを確保して、天井面の空調やダクトを無くすることを計画している。このように既存に既存に新たな意味や効果を付加し、また一意ではない所作を加えながら調整することで、新旧の対比を保ちながら建築として一つの全体性の確保を目指した。このような方法で生きている建築をさらに磨きをかけるように品質・機能・文化面の価値向上を図る改修を試みている。

概要その他

設計者
野沢正光建築工房
所在地
東京都港区六本木7-15-26
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改修年
2024年
建築規模
RC造、地下2階 地上6階 塔屋2階 延床面積 4510.00㎡
掲載書誌
新建築:2025年3月号、 改修前:新建築 1964年5月号、建築文化 1964年5月号、建築1964年5月号
資料・その他
全日本海員組合本部会館改修工事 竣工記念見学会 配布資料
資料・その他(PDF)
[ PDF版資料ダウンロード ]
URL
http://www.jsu.or.jp/member/construction/

リノベーションの手法・キーワード 等

減築, 復元・復原

 

備考

No194

 

 

記録作成者

氏名
白岩透
所属
野沢正光建築工房