イノチェンティ博物館(旧捨て子養育院)

Before:捨て子養育院 → After:イノチェンンティ博物館

赤ん坊が描かれた円形陶板はかつての建物の役割を物語る/柳沢伸也(2004年)

孤児院の歴史や使命と関わりの深い展示作品/柳沢伸也(2017年)

伝統的な件地区に設置された現代的な玄関扉/柳沢伸也(2017年)

ルネサンス期のブルネレスキの建築理念を色濃く反映する中庭空間/柳沢伸也(2017年)

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建築家ブルネレスキの初期作品である捨て子養育院を博物館へリノベーション。4年にわたる工事を経て2017年に完成した。主な改修は広場に面するファサードと中庭空間の修復であり、地下には新たな展示空間、3階部分にはカフェテリアが増築された。ミニマルデザインの階段とエレベーター及び金属製の玄関扉が設置され、建物は新たな姿へと生まれ変わった。

リノベーション概要

BeforeAfter
建築名称捨て子養育院イノチェンンティ博物館
Museo degli Innocenti
建築用途医療福祉施設 保育園, 児童福祉 図書館資料館, 教育施設, 展示施設 図書館 幼稚園 博物館
建築概要/
Renovation 概要

建築家ブルネレスキの設計で建てられた孤児院(1445年開院)。広場に面して作られた回廊のデザインはルネッサンス建築の草分けとされる。アーチの脇には赤ん坊が描かれた円形陶板が埋め込まれ、かつての建物の役割を物語っている。

「捨て子養育院」は、ヨーロッパ最古の孤児保護・養育施設であり、絹織物組合の出資によって実現した。1419年、フィリッポ・ブルネレスキが設計を依頼され、単なる養育院の建築に留まらす、サンティッシマ・アヌンツィアータ広場全体を回廊で囲む構想を立案した。その結果、広場に面する3方向に同じデザインの回廊が追加され、3つの建物はそれぞれ独立したものでありながら、細い円柱と円形アーチの統一された意匠によって一体感が生み出されている。
2017年に完了した博物館へのリノベーションは、4年にわたる工事を経て実現した。主な改修は、広場に面するファサードと中庭空間の修復であり、ファサードの壁に設置されていた10体の円形陶板のうち2体は、博物館の展示作品として移設された。また、地下には新たな展示空間が増築され、3階部分にはカフェテリアが新設された。さらに、上下の動線を改善するため、ミニマルデザインの階段とEVを新設。エントランスは、縦方向に開閉する金属製の自動扉が設置され、伝統的な建築に現代的な要素が加えられたことで、建物は新たな姿へと生まれ変わった。

概要その他

設計者
Carlo Terpolilli Ipostudio architetti
所在地
Piazza della Santissima Annunziata, 13, Firenze
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改修年
2013-2017年
賞・選定
Premio Architettura Toscana 2017
組織・人
Istituto degli Innocenti(イノチェンティ協会)
URL
https://www.museodeglinnocenti.it/museo/#storia-ospedale

リノベーションの手法・キーワード 等

産業遺産,外観保存,用途変更,アート,痕跡,増築,対比

用途変更, 痕跡, 壁面保存, 増築, 対比, アート

 

備考

捨て子養育院としての機能は1875年に受入れ窓口が閉鎖され、1890年に病院から公的な援助機関となった。イノチェンティ協会は、孤児や恵まれない子どもたちの保護に長い歴史を持ち、その理念を受け継ぎながら施設を運営している。改修後も、博物館に加え、保育園、幼稚園、児童教育センター、妊婦相談施設などを併設している。ユニセフ研究所や青少年の権利に特化した図書館も館内に設置され、児童福祉や教育に関する研究・実践の拠点となっている。

 

 

記録作成者

氏名
柳沢伸也
所属
JIA再生部会