印刷工場や倉庫として使われていた木造2階建ての建物

＜新建築2019年3月号より抜粋＞かって印刷工場や倉庫として使われていた木造の建物は、年月から生まれた味わいを秘めていた。所有者と使い手である事業者と共にこの建物のもつ可能性を探り、建物の価値を相互に共有し合いながら設計をおこなった。木造倉庫特有の特徴的なスチールサッシの外観、6ｍの木造フレームと鉄骨トラス、年月を感じる大きな丸太梁というこの建物に眠る価値を発見し、よさを極力継承する事で空間の魅力を引き継いでいる。断面的に抜けをつくるために新設した吹抜けと240×910㎜の柱に見立てた耐力壁、及びトップライトにより、地上階まで光を届け、立体的な繋がりを生み出し、さらに道に対し5ｍを超えるスチールサッシの大開口は、街と内部が連続的に繋がるような風景を作り出している。
これらの新しい価値と既存の持つ価値が相互に繋がり合うことで今までにない魅力が生まれ、街が新たな更新をしていくきっかけをつくりだす。小さな改修による更新は、建築の歴史や記憶を継承しながら、街に新たな価値と発見を未来に紡ぐことができる手法である。